知らないことも多く、なにからはじめるべきかわからなくて。
手続きって難しいのでしょうか?
それでは、その疑問を解決できるよう、「献体」に関してわかりやすく解説しますね。
「献体したい・・・」と考えていても・・・
「一体どこでどのような手続きを行なうの?」
「費用はかかるの?報酬は?」
「なにか注意することは?」
などなど、疑問がどんどん浮かぶのではないでしょうか?
自分の遺体を提供するからには、手続きの点からしっかり知っておきたいものです。
そこで今回は、献体に関して、
- その意味
- 手続きの仕方
- 報酬
- 注意点
などを紹介するので、参考にしてください。
献体とは?どういう意味があるの?
献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいいます。1)
献体を希望されている方の死後、遺族あるいは関係者がその遺志を尊重し、遺体を大学に提供することによって、はじめて献体が実行に移されますよ。
解剖に関して説明しますね。
解剖の種類
解剖には、大別して以下の3種類がありますよ。
- 正常解剖・・・人体の構造をしらべるための解剖
- 病理解剖・・・死後、すぐ病変をしらべるための解剖
- 法医解剖または司法・行政解剖・・・変死体の死因をしらべるための解剖
献体すると、上記1の正常解剖が行なわれます。
これは医学・歯学教育の基礎として行われるものであり、実際に学生自身の手で解剖し、人体の全身構造を学習し、体の成り立ちに触れるための重要な実習です。
この実習は、解剖学担当教授の責任と指導のもと、長時間を費やし、医学・歯学系大学の解剖学教室で行われます。
重要な所見のあった場合は、その臓器や組織を摘出・保存処理し、標本にすることも。
標本は匿名で取り扱われますが、これに関して、登録時にその可否を選ぶことができます。
実習をする医学生や医師には、解剖するご遺体が誰なのかは知らされません。
また、ご遺族にも誰が解剖したのかは知らされないです。
大学側、そして医学生も、真摯な気持ちと感謝の念をもってご遺体に向きあわれています。
人体の解剖学知識を習得すると同時に、献体に対する感謝の気持、その期待に応える責任と自覚も養われるのです。
医学の発展のために、全身の構造を学ぶ「解剖学」教育への充実をさせることは重要なのですね。
それでは、手続きはどのように行なえばいいのでしょうか?
大切な点ですから、次に詳しく説明します。
献体の手続きは?
手続きの流れは以下のようになります。
- 申込書を取り寄せる
- 申込書への記入
- 会員証(献体登録証)の発行
それぞれ詳しく説明しますね。
申込書を取り寄せる
まず、どこに申し込むのか?考えてしまうかと思います。
申し込み先は、
- 献体の団体(白菊会、不老会など)
- 医科および歯科の大学
となり、「大学病院」ではありませんから注意が必要です。
お住まいの都道府県にある医科大学(大学医学部)か歯科大学(大学歯学部)、または、献体の団体に問いあわせてください。
通常は、献体の団体、または医科および歯科の大学に請求すれば、申込書を送ってもらえます。
また、電話での請求も可能ですが、かならず本人により行なってください。
団体によっては、本人が事務所に出向いて、入会説明後、直接申込書類受け取ることも可能です。
一方、直接事務所に出向いても受付をしないところも。
そのため、事前に確認することをオススメします。
ちなみに、団体や大学によって手続き形式は多少違いますので、申し込み先の様式にしたがってくださいね。
申込書への記入
申込書に必要なことを記入し、捺印したうえ、献体の団体あるいは大学へ返送してください。
捺印は、自分自身の捺印はもちろんのこと、肉親の同意印が必要です。
なお、「同意の印」は、献体の団体、または大学から届く申込み用紙を用い、その署名欄に捺印をしてください。
「肉親の同意」は大変重要なことなので、かならず同意を得ておいてください。
生前に献体登録をしていても、本人死後、実際にその意志を実行できるのは、肉親の方がたとなります。
そのため、肉親の中に1人でも反対される方がいると、献体は実行に移せなくなるので、献体登録時点に肉親の方々から同意を得ておくことが大切となるのです。
申し込みされる先々で、2名・4名など違いがありますので、事前に確認することをオススメします。
肉親の範囲
肉親とは、配偶者および、同居別居を問わず親、子などです。
もし、子供がいない方・独身の場合は、親・兄弟姉妹・甥・姪の方にもお願いできます。
また、親族中で発言力の強い方がいらっしゃる場合、その同意も重要となりますよ。
なお、老人施設に入居されている方が申し込む場合、かならず施設長の同意が必要です。
ちなみに、登録先によっては、申込書記入後に、本人と同意者を交えての面接が行なわれる場合もあります。
この場合、郵送での提出は受理されません。
会員証(献体登録証)の発行
会員登録が終わりますと、登録先により多少違いはありますが、以下が自宅へ郵送されます。
- 入会申込書(コピー)
- 会員証
- 連絡用カード
上記の書類が届きましたら、連絡用カードに記載してある
- 会員番号
- 献体登録大学名
- 献体登録大学の電話番号
などをご家族、ご親族にも伝え、目立つ場所に保管し、万一の場合すぐ連絡できるようにしておいてください。
「献体の会員証」は大切なものですから、失くさないようにしてくださいね。
また、不慮の事故などに備え、旅行先などにもかならず持参するようにしてください。
遠方で亡くなられた場合、登録先の大学などからご遺体を迎えに行く場合、時間を要しご遺体の損傷が進んでしまいます。
そのため、登録している大学側などから近くの大学に依頼し、その大学に献体していただく場合も。
ただし、海外で亡くなられた場合は、海外までご遺体を迎えにあがることは不可能となり、献体はできなくなります。
新しい郵便番号・住所・電話番号をハガキなどで登録先にお知らせしてください。
なお、他県に転居された場合、転居先の大学医学部が紹介され転籍となります。
もし、心境がかわった場合、退会は出来るのでしょうか?
献体への登録は本人の自由な意志によって行われることですから、退会も自由です。
登録されている団体や大学などに問いあわせ、そちらの指示に従って退会の手続を取るようにしてください。
献体すると報酬はある?
献体は、自分の遺体を無条件・無報酬で提供することです。
そのため、献体したから報酬がもらえることはありません。
また、献体登録をしたからといって、その大学病院などで優先的に入院できるなど、特別な配慮をしてもらえることもありませんよ。
ただし、献体すると、火葬費用と搬送費用は大学側が負担します。
遺体の搬送費用とは、献体先となる大学まで遺体を搬送する費用です。
そのため、葬儀後に大学へと搬送する場合には、葬儀後の搬送費用のみ大学が負担します。
病院など亡くなった場所から安置先、安置先から葬儀を行う場所などへの搬送分は、ご家族の負担となるので注意が必要です。
また、遺骨は遺族に返却されますが、引き取り手がいない遺骨は大学が用意した合祀墓や納骨堂に納められます。
しかし、お通夜や葬儀をする費用は、遺族が支払わなければならないので、献体してもその費用はかかりますよ。
献体する際の注意点 出来ない場合もあるの?
献体する際の注意点として、以下の場合、献体ができなくなります。
- 肉親の同意が得られない場合
- 臓器提供をする場合
- 病理解剖や行政解剖が行われる場合
- 感染症などで死亡した場合
- 遺体の保全が困難な場合
また、献体したあとの注意点として、
- 遺体が遺族の元に戻るまで時間を要する
- 献体後の火葬は家族の立ちあいは許可されない場合もある
もあります。
肉親の同意が得られない場合
さきほども少し触れましたが、申込書を記入する段階で肉親の同意が必須となります。
また、最終的に献体として提供する際にも肉親の同意が必要です。
献体を希望し、生前に献体登録をしておいても、遺族の中に1人でも反対する者があると献体は実行されなくなります。
そのため、献体を希望する場合、生前から周囲へ自分の考えを伝え、献体として遺体を提供することへの理解を得ておきましょう。
臓器提供する場合
臓器提供のドナー登録者であっても、献体登録を受けつけている大学もあります。
しかし、実際に亡くなった場合、臓器提供、または献体のどちらかしか行なわれません。
そのため、自身の死後、臓器提供か献体のどちらにするか選択する必要があります。
なお、角膜を提供する献眼に関しては、受けつけている大学、または不可の大学もあります。
ただし、献体は学習のためにおこなわれるので、学生のためには両眼があるほうが望ましいのため、角膜提供を希望される方は一眼(片方)に限定してください。
病理解剖や司法解剖、行政解剖が行われる場合
亡くなった時の状況によっては、病理解剖や司法解剖、行政解剖が行われる場合もあります。
事前に解剖が行われた場合は献体を実行することができません。
- 病理解剖・・・病気のために亡くなられた方のご遺体を解剖し、臓器・組織・細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うこと
→ご遺族の承諾がなければ行なえない - 司法解剖・・・犯罪の可能性が高い場合に行われる
→警察の要請に応じ、裁判所が「鑑定処分許可状」を発行すれば、遺族の同意なしに行なえる - 行政解剖・・・事件性はないものの死因が特定できない場合に、遺族の承諾を得た上で行われる
→ただし、遺族と連絡がとれない場合、食中毒など被害が大きな際には、承諾なしに解剖する場合もある
感染症などで死亡した場合
教職員、そして医学生への二次感染を避けるため、感染症で死亡された場合、献体は出来ません。
主な感染性疾患として、以下のものがあります。
- B型肝炎、またはB型肝炎に起因する肝硬変や肝癌
- C型肝炎、またはC型肝炎に起因する肝硬変や肝癌
- エイズ(HIV感染症)
- HTLV感染症、ATL(成人T細胞白血病)
- 活動性結核
- 梅毒
- クロイツフェルト
- ヤコブ病など
遺体の保全が困難な場合
以下の場合、ご遺体の保全が難しいくなるため献体はできません。
- ご遺体が傷んだ状態にある場合
→死後経過時間、および献体までの保存状態に関係する - 交通事故などの外傷により亡くなられた場合
→ご遺体を保存する処置が困難となる - 手術中または手術直後に亡くなられた場合
→ご遺体を保存する処置が不完全になる恐れがあるため
その他
その他として、
- 例外もありますが、登録している居住地以外で亡くなられた場合
- 自殺で亡くなられた場合
なども献体できなくなります。
遺体が遺族の元に戻るまで時間を要する
実際に遺骨として返還されるまでには、通常1〜2年後、長い場合は3年以上かかる場合があります。
解剖準備期間(防腐処理など)に3〜6ヶ月ほど、実際の解剖実習期間に3〜7ヶ月要するため。
また、解剖実習カリキュラムの変動や、献体数によって予定が変わったりするためです。
ちなみに、献体されたご遺体は、設備の整った保管場所に丁寧に保管されますよ。
献体後の火葬は家族の立ちあいは許可されない場合もある
登録先の団体や大学などで違いはありますが、献体後の火葬での家族の立ちあいは許可されない場合もあります。
ただ大学などによっては、ご遺族の方々がお骨上を出来る場合も。
自分の死後、ご家族はどうされたいのかも話しあい、このような点も事前に調べておくことをオススメします。
ちなみに、解剖学実習では頭部を含む全身の解剖をするため、火葬が終了するまでご遺体との面会は一切できません。
ご高齢の方が優先される傾向にあり、入会年齢は60歳以上としているところもあります。
しかし、明確な年齢制限はなく、成人に達している方となっている場合も。
その理由は、若い方々は将来、家族構成や意志の変わる可能性があるため、家族全員が成人に達しておられる方を対象としているためのようです。
まずは、家族とじっくり話しあい、同意を得ることからはじめたいと思います。
ちなみに・・・
日本国内でも珍しい地域として、福岡県久山町があります。
九州大学病態機能内科学が行なっている1961年からの取り組みとして、「久山町研究室」というものがあり、卒中・心血管疾患などの疫学調査のため、町民の献体が行われているのです。
40歳以上の全町民を対象とし、
- お通夜やご葬儀には支障がないように、病理解剖が行われる
- 遺族には、寝棺・霊柩車・火葬料(町の規定額)の補助が行われる
というような規定があります。
この久山研究室が行なっている献体は、正確な死因を知るという点においても、献体以上にたしかな方法はないといえるでしょう。
まとめ
今回のポイントをまとめますね。
- 献体とは、医学・歯学の大学における解剖学の教育・研究に役立たせるため、自分の遺体を無条件・無報酬で提供すること
- 献体では、人体の構造をしらべるための「正常解剖」が行なわれる
- 解剖学実習は匿名で行なわれる
- 献体の申し込み先は、献体の団体(白菊会、不老会など)医科および歯科の大学となり、「大学病院」ではない
- 献体の申し込みには、肉親の同意印が必要
- 本人死後、実際にその意志を実行できるのは、肉親たちの同意によるものである
- 献体しても報酬はない
- 献体すると、火葬費用と搬送費用は大学側が負担してくれる
- 献体は、肉親の同意が得られない、臓器提供をした、病理解剖や司法解剖などが行われた・感染症などで死亡した・遺体の保全が困難などの場合できなくなる
- 献体したあとの注意点として、遺体が遺族の元に戻るまで時間を要する、献体後の火葬は家族の立ちあいは許可されない場合もある
献体を希望しても、肉親の同意が得られないと実行に移せないのは、場合によっては大きな壁となりそうです。
しかし、ご自分の意思が固いのであれば、話しあいにより献体への理解を深めてもらい、納得のうえで同意を得られるようにしてくださいね。